記録47号
パリの写真美術館「MEP」での東松照明・森山大道二人展は、コロナのこともあって開催が遅れに遅れていたが、このほどようやく開館の動きがあったようだ。
森山クン、ぼくと一緒に東京をテーマにした二人展をやる気はないかね?と東松さんから声を掛けてもらったのは、ぼくが撮影もかねて沖縄に行ったときのことである。ぼくもずいぶん数多くの展示を経験しているが、東松さんとの展覧会は初めてである。それも東松さんからのプランであれば、ぼくとしても断る理由がない。いいですね、ぜひそれぞれの写真を面白くシャッフルして迫力のある壁面が出来ると最高です、とぼくは応えた。しかし、その二人展のプランは、一年余りの時を経たあと東松さんが亡くなられるという思ってもみなかった事態によって中断を余儀なくされてしまった。ぼくとしては、東松さんとの二人展の開催は願ってもないことだったので、残念だったし気落ちもした。しかし、それから数年経った現在、その東松さんのプランは、思いもかけない経緯を辿ったのち、時と所を得たというか、むしろそれぞれにとって、二人展にとって、最良のスケールとスペースを与えてもらったと思う。
そして、東松さんの「二人展」への思いはそのまま海を越えて、このほどパリ展の形で実現をすることになった。「MEP」の館長サイモン・ベイカーさんと、AKIO NAGASAWA Galleryの長澤章生さんのお二人による企画、制作、構成によって、頭初のシャッフル形式ではなく、それぞれ相当数の写真作品による大がかりな二人展でということになった。つまり規模を持った「東京」展が開催されるわけである。コロナ蔓延の現在、ぼくたちの二人展が、パリの、そしてヨーロッパの人々にどのように観てもらえるのであろうか。
それにしても、言い出しっぺの東松照明さんには、ぜひパリで見てもらいたかったのに…。
今号の「記録」47号は、過日ふと東京タワーを見かけて一枚撮ったことで、その周辺に拡がるあちこちの街区を写し回ったものだ。いうまでもなく、今号も“マスク都市景”というわけだ。
― 森山大道(本書あとがきより)
- 判型
- 280 × 210 mm
- 頁数
- 120頁
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2021
- 言語
- 英語、日本語