北海道
写真集『光と影』へとつながる連載(81年〜83年)を『写真時代』誌上で開始する前の"空白"ともいえる2年間、そこへとまさに突入して行こうとする1978年の初夏、日々の生活への一種の「肉離れ」を感じ、次第にここではないもう一つの場所へ逃れたいと感じるようになっていたという森山大道は、北海道行きを決意します。かねてから田本研造を中心とした開拓写真師達の写真の中に“写真”を見、彼の地に強い思い入れを抱いていた森山は、札幌に3ヶ月間アパートを借り北海道中を撮影してまわります。
かつてあれほどぼくの心のうちを占めた北海道とその幾多の町。津軽海峡を渡っていくときのあのときめきは、いったいどこに行ってしまったのだろうという思いは、今でもときおりぼくのなかにわだかまりとして残っている。三年まえに約束した北海道の写真集も、いまだに一枚のプリントすらできずにかつてのネガフィルムだけが山になって眠っている。いずれ作ることになるのだろうが、いま少し時間がかかりそうな気がする。まさか、青函連絡船が海峡から姿を消してしまったからだというわけにもいかないし、結局自分で自分にまだうまく説明がつかないのだ。
― 森山大道『犬の記憶 終章』朝日新聞社、1998年
― 出版社説明文より
- 判型
- 364 × 280 mm
- 頁数
- 664頁
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2008