記録53号
昨秋、写真家ウィリアム・クライン氏がパリで亡くなられた。
2012年、ロンドンのテート・モダン美術館で、ウィリアム・クラインとぼくの二人展が開催され、多くの人々に観て頂いた。ウィリアム・クラインの壁面は、写真はもとより、絵画作品、ムービー・フィルムなど多彩な構成で、いうまでもなく圧巻であった。一方ぼくの壁面は、ごく一部のカラー作品を除き、そのほとんどは大伸しのモノクローム・プリントをびっしりと張りめぐらせた構成であった。
ほゞ60年もまえ、あの衝撃的な写真集『NEW YORK』で思いっきり横っ面を張り倒されてぼくの写真人生が始まったわけで、とすればロンドンの二人展といえば、ぼくとしては、クラインに向けたモノクローム・プリントの氾濫以外に手はなかった。
そしてぼくは、大きな車椅子に乗って、その巨きな姿を現わしたクライン氏と久方ぶりに再会して、どちらからともなく握手を交わしていた。もうこのひとときの時間の内に、そして、二人展が始まったばかりにもかかわらず、もうオレの二人展は終ったも同然と云いたいほどの感懐が心中を満たしていた。(後略)
― 森山大道(本書あとがきより一部抜粋)
- 判型
- 280 × 210 mm
- 頁数
- 122頁
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2023
- 言語
- 英語、日本語