王国
日本を代表する写真家・奈良原一高の1950年代における代表作「王国」。これまでの作品集には未発表の作品を多数収録し、このたび新装刊行が決定!
戦後日本写真史を語る上でも名高い巨匠・奈良原一高の「王国」とは? 1958年9月に、銀座・富士フォトサロンにて発表された奈良原一高写真展「王国」。 1896年に創立された北海道・当別のトラピスト男子修道院を取材した「沈黙の園」と和歌山市の婦人刑務所を舞台とした「壁の中」という、それぞれ外部と隔絶された2つの空間を舞台とした2部構成でまとめられたものです。
その約1年半前の1956年5月に開催された初の個展「人間の土地」に続く2回目の個展であったこの「王国」展の意図を、奈良原は後に以下のように語っています。
異なった2つの「場」に生きる人間の姿を同時に見つめることは、 そこに浮かんで来る現代の状況と心層の響きに耳を傾けることでもあった。 ~中略~ 自らの必然によって求めた祈りの生活と法律によって強制隔離された生活、 その動機は異なっていても、共に閉ざされた壁の中の世界…、 そのような壁は日常の心の中にもとらえがたい疎外の感覚となって介在していて、 当時の僕はそのような自分の内部にある不安と空しさをこの『王国』の場をみつめることによって超えようとしていた。 事実は観念をとびこえる肉体をもっている。
この展覧会で発表された作品により、奈良原は第2回日本写真批評家協会新人賞を獲得します。 本の形としても、これまでに1971年に中央公論社から『王国 映像の現代 1』として、1978年に朝日ソノラマ社から『王国 -沈黙の園・壁の中 ソノラマ写真選書 9』として刊行されますが、いずれも絶版の状態が続いていました。
その奈良原の「王国」が再び注目されるきっかけとなったのは、2014~15年に東京国立近代美術館で行われた「王国」展でしょう。2つの極限世界で生きる人々をとらえた数々の写真を前に、訪れた多くの人が息をのみ、作品の放つ世界観に圧倒されました。 こちらの展覧会でも掲載された一連の写真だけではなく、これまで作品集には収録されることがなかった未発表作品をも多数含んだ新装版としてまとめるのが、このたびの『王国 Domains』です。
- 判型
- 276 × 210 mm
- 頁数
- 208頁、掲載作品135点
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2019
- ISBN
- 978-4-835456-80-5