Dazai
本書は、森山の時を跨ぐモノクローム作品とともに、太宰の代表作『ヴィヨンの妻』が収録されている。小説家・太宰治の作家としてのキャリアは、わずか15年。そのような短期間で太宰は、20世紀の日本文学に強烈なインパクトを残した。自らの内奥をさらす、多様で魅力的なストーリーは、日本のみならず海外でも今もなお、深い影響力を持つ。日本を代表する写真家である森山大道もまた、太宰文学に魅せられた一人。太宰の死生観がそこはかとなくうかがわれる『ヴィヨンの妻』は、1947年に発表された太宰の代表作の中の一篇で、主人公、大谷は太宰自身、その妻とは1939年に結婚をした美知子をモデルにしたものと推察され、全篇を通して、妻さっちゃんの女性的な語り言葉で、綴られていく。森山にとって太宰の小説は、語り手である主人公ばかりでなく、時代の空気や状況描写のなかに、生でアクチャアルな人間像をたちのぼらせる文体が、圧倒的に他の小説を凌駕していた。「『ヴィヨンの妻』をはじめとする太宰の小説は、僕が、嗅覚や視覚を通して感知し記憶した戦後のイメージと、ぴたり符合する」と森山氏は語る。
- 判型
- 228 × 158 × 18 mm
- 頁数
- 172頁
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2014
- エディション
- 1200
- 言語
- 英語
- MMM label No.5