森山大道写真集成⑤ 1960─1982 東京工芸大学 写大ギャラリー アーカイヴ
この写真集制作中に、
ぼくは幾度となく、ぼくが写し、細片化してしまったあらゆる事象、
つまり様々な場所、時間、情景、
そこに当る光と影との再会の時間を持つことができた。
― 森山大道
東京工芸大学芸術学部 写大ギャラリーが所蔵する、1960年から1982年に撮影された930点にも及ぶプリントを一冊に編集・造本設計した、森山大道の初期作品を辿る貴重なアーカイヴ作品集。雑誌や写真集などには掲載されていない未発表作も多く含まれている。
アーカイヴ930点の撮影場所、撮影年、イメージサイズを詳細に記し、作品が掲載された雑誌などの初出の時系列順に分類された“作品一覧”も掲載。
森山大道、吉野弘章(東京工芸大学 学長)、町口覚(本書の造本設計・編集担当)がテキストを寄せている。
ぼくが写したものでいま残っているもっとも古い写真、一等古い撮影である1960年の、写真に足を踏み入れた頃の、夜の大阪を写したスナップから、以降20年間の時を経て、1982年に出版された『光と影』に至る写真が、この本には収められている。
このアーカイヴの過半は、1976年、ぼくの写真の師である細江英公先生の目と手を通して、工芸大で展示されたプリントである。そして1999年にサンフランシスコの美術館から始まった、ぼくの本格的な数々の海外展で、主要な展示作品となっていった。
1961年、ぼくが大阪から上京して細江先生の最初のアシスタントとなり、それ以降辿ることになった長い長い写真の道すじには、陰に日向に細江先生がより添ってくださっている。この写真集制作中に、ぼくは幾度となく、ぼくが写し、細片化してしまったあらゆる事象、つまり様々な場所、時間、情景、そこに当る光と影との再会の時間を持つことができた。細片となったイメージたちは、あれこれの時・空が混然と錯綜して視界に映り、新鮮に感覚されてくる。決して懐かしいという心情などではなく、もうひとつの時・空となって、それを見るぼくに、さまざまなことを知らしめてくれる。
細江先生とめぐり会って以来60年、写真という二文字が持つ魅力は、しぶとくしたたかな引力とともにぼくを摑えて離さなかった。― 2021年2月 森山大道
- 判型
- 302 × 222 × 60 mm
- 頁数
- 832頁、掲載作品1018点
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2021
- 言語
- 英語、日本語