彼岸
「彼岸」は、荒木が前立腺癌の治療を受けながら、タクシーの窓越しから東京を撮影した。これまでも荒木は、「クルマド」シリーズとして同様の撮影を長年続けてきたが、今回の写真は200mm望遠レンズで撮影されており、街の日常的な光景に「喪失感」を重ねながら、彼岸を見つめるかのように、あるいは彼岸から見つめるかのように、荒木は様々な人々の姿かたちにレンズを向けている。同時に刊行された『楽園』同様、本書収録の作品は、長年連れ添った愛猫チロが死を迎えた昨春以降に撮影されており、失った時間(とき)に対する荒木のさまざまな想いが染みわたっている。「彼岸」「楽園」両作品は3月11日の大地震以降の自らの写真のあり方を示している。
- 判型
- 212 x 155 mm
- 頁数
- 164頁
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2011
- エディション
- 800