写狂老人日記 陽子ノ命日
だいたい人はさ、1日を繰り返しているわけだよ。
「繰り返している」って意味では、退屈なんだね。
そりゃ忙しかったり、事件がある日もあるけれど、
かならず退屈という隙間もあるのさ。
アタシのいまの写真の境地は、
その「退屈」なんだよ。
いままでだったら没写真のようなのがいいね。
この写真集は、
陽子の命日だけを写したんだけど、
特別にじゃなく、朝起きてタクシーに乗って出かけて、
夜帰ってくるっていうのを、
いつもと同じように、
同じようなトコを淡々と撮った。
1日だけを撮っても、コトは写るからね。
どんどんありのまま、そのままになっていく。
写真にあまりにも近づきすぎちゃっている。
もっと退屈でもよいくらいだよ。
『陽子ノ命日』は、陽子の遺影にローソク1本、あげたようなもんだね。
幽かな写真の光が灯っている
2015年5月25日
― 荒木経惟、あとがきより
- 判型
- 248 x 248 mm
- 頁数
- 56頁
- 製本
- ソフトカバー
- 発行日
- 2015
- 言語
- 日本語