Tokyo 1992
キャンバスにシルクスクリーン刷表紙シリーズ最新刊。1992年に森山が東京で撮影した写真を纏めた写真集。収録作品は全て未発表で、本写真集が初出となります。
1992年といえば、現在(いま)から31年も以前のことで、ぼくの年令が、50代の半ばに差し掛った時期であり、ぼくがそれまで持っていた渋谷・宮益坂のプライベート・ギャラリーを閉めて、四谷4丁目交差点近くのスペースに移り変わった頃のことである。渋谷での数年に渡るギャラリーの日々は、当然来客もあるわけで、勝手気儘に留守にするというわけにもいかず、ぼくの我慢は、身から出たサビとはいえ飽和状態に達していた。その時のぼくは、“とにかく写真を撮りたい!”その1点であった。なにをどう撮るなんてことなどどうでもよく、とにかく街へ路上へ飛び込んでシャッターを切りたかっただけだった。そして、移り変ったばかりの四谷界隈などアッという間に撮り了り、となればあとはもう新宿、渋谷、池袋というわけで、水を得た魚とでもいうか、飢えた野良犬となって、都市の迷路を彷徨う日々を過ごしていた。
この写真集『TOKYO 1992』は上記の状態の真只中に写し撮られたイメージばかりで作られている。つまり、当時のぼくの一種もだしがたい沢山の想いの中から1993年制作の写真集『Daido hysteric no.4』と2023年制作の『TOKYO 1992』の2冊が時を隔てて作られたことになる。
一匹の飢えた犬がウロつき廻った幾多の街路や裏町は、時とともに様態を変えたとはいえ、街の体臭も欲望も、そしてそこに当たる光も影も、じつはほとんど変ることがない。そして、老いた野良犬も、たとえよろめきがちではあっても、カメラを手に路上をさすらっている、だって“写真”ってカッコいいからさ。
― 森山大道(本書あとがきより)
― 出版社説明文より
- 判型
- 303 × 217 mm
- 頁数
- 78頁
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2023
- 言語
- 英語、日本語
- エディション
- 350