Blue Persimmons

Blue Persimmons

岩波友紀

出版社:赤々舎

見えない放射能 見えない分断 見えない被害。福島を可視化する

新聞社のフォトグラファーだった岩波友紀は、東日本大震災後に福島県に移住し、震災と原発事故に関連した写真作品を作り始めます。3冊目の本格的な写真集となる今回の作品は、原発事故を受けた福島と真正面から向き合うものです。

「初めて汚染された村を見た時、そこには何も見えませんでしたが、見えないからこその恐怖を感じた」と岩波は言います。写真に写らないことを理解した岩波はその後福島に住むことによって、原発事故の被害は人の心の中にこそあると気づきます。それらを写真によって可視化することはできるのかーと、10年間に渡って撮影しました。

風景とポートレートで構成されるこのシリーズは、土地と人との関係と、人間の生そのものを表します。なにかを覆い隠すような深い霧、放射能のように降り続く白い雪。見えない放射能、見えない被害を、イメージによって立ち上げようと試みています。植物に覆われた朽ちた人工物と、突然現れた真新しい人工物が併存し、時間と空間の概念を歪ませます。

複数の写真が交錯するページでは、岩波自身が感じた不安や恐怖、悲痛な思いが伝わってきます。答えを出すのではなく、揺れつづけ、見続けることにより、土地と人との在り方を記録した本作『Blue Persimmons』(青い柿)は、痛みに貫かれつつ、まだ誰も体験したことがない時間の入口に立つものです。

― 出版社説明文より

真実により近いものがより目に見えにくい、とここではよくわかる。放射能を五感で感じられないのと同様に、その被害も、その先の肝心なことも確かな実物として感じられない。おそらく何が真実なのかを認識することの難しさは、福島に限らず世界中で共通していることかもしれない。(中略)

事故から10年以上経っても正反対のものが隣どうしで混在し、そのどちらも真実だとも言える。ある人はなすすべなく見つめ、心に蓋をする。ある人は何かを決意し自分の信念によって進んでいる。しかし何が正しいのかは、誰にもわからない。今までもそして今後も。それでも福島では、ただそこに土地は存在し人々は生き続けている。その事実だけがいちばん真実らしいものとして存在している。

私は福島の写真を撮ることの意味を自問自答し続けたけれども、結局答えを見つけられていない。今の私には生きることと写真を撮ることは同義だから、ただ生きていくことと同じように、ただ撮ってきただけなのかもしれない。福島の人たちも、存在する限りただ生き続けている。生きて、生きて。生きていくということは進んでいるということ。たとえ、どこへ向かってかわからなくても、意味が分からなくても。この時間と空間からは逃げ場などなく、降り注いでくるものを受け入れるしかないのだから。

― 岩波友紀

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