無名の男女(東京1976-78年)
名も無き花が存在しないように、無名の人間も実際には存在しない。
教科書に残るような人物を主役とするならば、ほとんどの人間はバイプレイヤーだが、視点を変えれば独自の歴史の主体であることは言うまでも無い。彼らは何気ない日常に埋もれているようで、個々の核たる奥底には強靭な力を隠し持っているのである。だからこそ、かつて、革命はこうした無名の庶民によって起こされた。(中略)もはや時代の背景として過ぎ去った一瞬ではあるが、今、ずっしりとした彼らの生の重みが撮影者である私の方に跳ね返ってくる思いがしている。
― 須田一政(生前のコメントより)
この「無名の男女」は、1976~78年にかけて東京で撮影された100点で構成されたシリーズである。『カメラ毎日』1978年11月号の誌上にて49点が発表され、同時期にニコンサロン(新宿・銀座)にて100点全てが展示された。
しかしながら、発表当時は写真集として纏められていなかったため、その後『わが東京100』(ニコンサロンブックス、1979年)へ25点、『人間の記憶』(クレオ、1996年)へ3点、『東京景』(Zen Photo Gallery、2013年)へ3点、『Childhood Days』(Akio Nagasawa Publishing、2015年)へ3点といったように様々な写真集に「無名の男女」シリーズからの作品が収録されたり、1点については1982年に「物草拾遺」シリーズの1点として展覧会に出品されるなど、このシリーズは解体されて今に至る。現在では、発表当時の「無名の男女」の姿を確認することができないことから、今回、須田一政が当初構想した100点を完全収録し、このシリーズの全体像を復元することとした。
― 出版社説明文より
- 判型
- 207 × 216 mm
- 頁数
- 160頁
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2021
- 言語
- 英語、日本語
- エディション
- 600