やまなみ (A)
いのちといのちが出会う時、
〈自分が自分であるだけでいい〉場所に
立ち現れる、ある〈可能性〉の物語
写真家・川内倫子がアールブリュットの才能が集う場所として注目を集める滋賀県の障害者福祉事業所〈やまなみ工房〉に通いつづけ3年の歳月をかけて完成させた写真集。
初めて訪れたのは2018年の夏。靴を脱いでスリッパに履き替え、ホールのなかに入り、初めまして、お邪魔します、と利用者の方々にご挨拶をしていたら、ふいに大きな声が聞こえたかと思うと、ハッピバースデーツーユーとうたい出した人がいた。ぎゅっと目を閉じて拝むように両手を合わせ、大きな声でうたっているその人の発する力強さに圧倒され、呆気にとられて目を離せなかった。それはまるで大きな滝がごうごうと音を鳴らして水を流しているようでもあり、人は自然の一部だったことを思い出させた。いつでも圧倒的なものに出会うときはそうであるように、胸が震えてしばらくなにが起こったのかわからなかった。
― 川内倫子(「自分が自分であるだけでいい場所 やまなみ工房のこと」より)
― 出版社説明文より