上野駅の幕間

上野駅の幕間

本橋成一

出版社:平凡社

修学旅行、出稼ぎ、帰省など駅に集う人々の表情、駅員や清掃員、懐かしい駅舎と列車の情景……待望の写真集を新編集と造本で再刊。昭和のにおい懐かしい「心の駅」が蘇る。

駅は広場だって常々言ってるんです。東京大空襲の後、父はさすがに怖くなったのか、家族みんなで長野県の茅野・蓼科の祖母の家に疎開したんですね。新宿駅から中央本線で行くわけですけど、その時の新宿駅の印象が強く残ってるんです。何て言うんだろう。待たされた地下道の居心地が良くて、安心感があってみんなが集まれるところ。

それと同じような意味で、上野駅って、東京の中では、唯一残っている「駅らしい駅」だと思ったんです。平気で何時間も列車を待つ人、用もないのに集まってくる人たちがいて、まさに広場なんです。ヨーロッパ終着駅とかもそうですよね。人の出会いとか、別れとか、そこにドラマがある。そんなふうにたたずむのが、本来の「駅」なんだと思う。

僕はその頃、出版社に写真を届けたり、打ち合わせに出かける時は、どこでも食べられるようにって、お弁当を持ち歩いてたんです。だけどなかなか弁当を広げられるところって限られててね。デパートの屋上はいいけど、公演は人目が気になるとか。それで、神田とか、銀座近辺に来る時は、上野駅によく行ってたんです。上野駅だとね、ほんとにどこで食べてても気にならない。ちょっと余裕があればワンカップを買ったりして。上野駅も上越新幹線工事が始まると聞いて、今のうちに記録しておかなくちゃというんで通いだしました。
(『本橋成一 写真と映画と』タイムトンネルシリーズ24 ガーディアン・ガーデン展カタログより、2007年刊)
都築響一『Roadsider's Weekly 2013/06/19号 Vol.071』より

キーワード: メモリー

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判型
252 × 192 mm
頁数
208頁
製本
ハードカバー、ケース
発行年
2012
言語
日本語
ISBN
978-4-582277-95-1

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