Retrotopia
Retrotopia(レトロトピア)とは、我々の「安全地帯」が、益々多様化する世界や競合するモデルによって脅かされるように感じられる不確実で面倒な未来を再確認するために過去に目を向けることを意味する。我々が安全だと感じる方法で行動でき、資源を確保でき、また目標が確認できる好ましい環境のこと。
2018年から2021年までの4年間、史阳琨(シー・ヤンクン)は中国江蘇省の華西村、河南省の南渓村、山西省の大寨村の3つの村を撮影した。そこでの街並みや建物、人々の服装は、中国の他の小さな町と大差はない。写真はすべて日常の風景と人物である。村の空間は静かで、人物の姿勢や表情も穏やかだ。
写真でしか得られないのは、ある時間と空間の断片であり、それは一瞬の詳細で真実の現実と、全体としての記録不可能な現実との間に緊張を生み出す。かつて集団主義の時代を共有したこの3つの村は、ついに、明確な未来像のない、個人的で断片的で流動的な現代という時代を迎えた。これは工業化、市場化以降の見慣れた光景であり、複雑な思いを抱かせる。
『レトロトピア』というタイトルが暗示するように、シー・ヤンクンの記録は、はかない歴史の中にある巨大な夢の、はかない肖像の数々を捉えようと努めている。この夢は一度は失われたが、ノスタルジーという形で困難を伴いながら続いている。この一連の写真によって提供される信憑性は、こうした疎外された記憶と、それを背負う人々の現状を、強制的に直接検証することに等しい。
― ディストリビューター説明文より
- 判型
- 270 × 220 mm
- 頁数
- 134頁、掲載作品65点
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2024
- 言語
- 中国語
- エディション
- 500