微塵聖像
『微塵聖像』は、写真数20点のみの特別限定版1000部が2016年に中国で発売され瞬く間に完売となって以来、各方面で注目を集めているポートレイトシリーズ作品です。作者の馮君藍(Stanley Fung)は牧師でもあり、モデルとなっているのは彼の教会の信者たち。このシリーズを初の写真集としてまとめた本作には、98点の心揺さぶる肖像が収められています。
馮君藍は幼少時から親しんできた美術や写真に関連する仕事に携わった後に、牧師になりました。同じく牧師であった父親が遺した臨終の言葉がきっかけでした。それは「神との約束を果たすべきだといつ感じるか。それがいつであろうと、決して遅すぎることはない」というものです。
若い頃、彼は自らも伝道者になると誓いを立てたことがあったのです。そして父親が癌で亡くなった後、2年の苦悩の時期を経て、35歳で神学校に進む決心をしました。神学校における約8年の学びの中で、彼は生前の父親の姿や訓戒の数々を思い浮かべ、また父子関係が睦まじかったとは言い難いことを後悔しました。そして台北の士林にある教会を、小さく温かい美術空間とし、カメラを手に取り、聖書の物語をモチーフに、彼の元に集まる信徒たちをモデルに『微塵聖像』シリーズの創作を始めました。もっと早くに父親を理解すべきだったと悔いた馮君藍は、アートという手法で父親との約束を実践しています。
作品の大部分は、20年間愛用しているニコンFM2、標準レンズ、反射板、遮光布、そして光が入る大きな窓という簡素な条件下で撮られています。そして彼が写真という形式で写し出すのは、聖書特有の人間観です。それは無秩序な霊長類としての人間ではなく、欲望に駆られた自律的な主体でもなく、道具を使う文化的な動物でもありません。それらは光によって照らされた微粒子であり、物質と霊的なものとが混ざり合った存在です。
「自分の仕事は伝道者。写真は趣味の一つに過ぎない」と馮君藍が語る一方、著名な中国人画家の陳丹青氏はこの作品集を「神の視点で人を見ることで、人の中に神性を見出している」と評価しています。それは馮君藍自身が語った、以下の言葉にも通じています。
「私たちがどう信じるかが、私たちが何を見るかを決定するのです」
― 出版社説明文より
- 判型
- 290 × 215 mm
- 頁数
- 116頁、掲載作品98点
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2024
- 言語
- 英語、中国語