TAMANO
『TAMANO』は、2013年に開催されました瀬戸内国際芸術祭2013で発表しましたプラチナポートレイトを纏めた写真集です。モデルは岡山県玉野市に住むお年寄り48人です。これまで男性ヌードを主に作品としてきた野村にとって、美しいと感じる対象が老人の中に存在していました。日常から非日常へと変貌し、モデルの華やぐ一瞬の美しさを野村がファインダーから切り取った作品は、人間の生命の美しさへのオマージュであります。
野村自身が被写体から感じる「美しさ」を、彼女は決して説明しようとはしない。もしかしたら、その感覚がどこからやってくるのか、野村本人にも分 からないのかもしれない。
「写真展を開くと、この写真は一体何なのか、何を表現しているのかと、 よく聞かれる。でも、私はもうちょっと、写真そのものの力を信じているから」 すべてデジタルカメラで撮られた、フルカラーの 48 人の肖像は、やはり 観る者の心をざわつかせる。その「美しさ」に対する共振こそ、野村が 20年以上続けてきた「写真を撮る」という営みそのものなのだ。 ― 多比良孝司氏、写真集テキストより抜粋
撮影のあいだ、お年寄りの方々の視線はレンズを通り越し、その向こう 側にいるもう1人の自分との対峙を楽しんでいるかのように見えた。より 永 く 懸 命 に 生 き て き た こと の 代 償 で あ る 心 身 の 衰 え を 、し ば し 忘 れ たかのようにきらめく瞳が見つめていたものは、 何であったのか。 若かり し頃の恋、健康にあふれていた自身の肉体、家族の思い出... だっ たかもしれない。同時に、そのような状況を創り出すことにかけて、野村 の濁りない眼と醸し出す空気が、重要な役割を果たしていることもうかが い知れた。― 本尾久子氏、写真集テキストより抜粋
- 判型
- 364 × 257 mm
- 頁数
- 48ページ
- 製本
- ソフトカバー、袋とじ
- 発行年
- 2014