Shrove Tuesday
彼らはあらゆる手段を使って、ボールに向かってゆく。
ボールを中心にひとつの密集ができ、その中に埋もれたボールはなかなか姿をみせない。
たまにボールが動くと一気にその密集ごと動き出す。
判断が遅れると危険だ。
決まったユニホームもなく私服でボールを奪い合っているものだから、敵や味方や観戦者の境界も曖昧だ。
ボールの周辺は常に混沌としている。
これが350年続くとされるフットボールの原風景。
その混沌の中に、ただ本能のおもむくまま身を投げじていく彼らの姿は、なんと生々しく、人間の業を見るようだった。
私は必死に迫っていた。
時に突っ込み、時には逃げながら。
― 甲斐啓二郎「Shrove Tuesday」より
- 判型
- 257 x 300 mm
- 頁数
- 32頁
- 製本
- ソフトカバー
- 発行日
- 2013
- 言語
- 英語、日本語