shashasha 写々者

ロサンゼルスを拠点とするマイク・スラックの「Walking in Place」シリーズは、異なる都市・街、映画や小説の舞台を取り上げている。2016年に初版が刊行された本書では、映画「The Big Easy」(1987年公開)の舞台をとりとめもなく巡ったスラックの記録であり、遊び心を携えた日記とも言えそうだ。「観察」「記録」「蓄積」といったほどんど無意識の内に行われる行為に委ねながら、彼の視線は建築物の細部や地元の植物、通りで見つけた何てことないもの、彼の前を横切る猫たちに向けられている。ポケットに収まるペーパーバックのサイズとスラック自身による編集・レイアウトが、光と色調を詩的に捉えた作品とマッチした美しい一冊。