TYO-WTC
万物は流転する|TYO-WTC|松江泰治による新しい都市観測
写真の本質に果敢に挑みつづける松江泰治の最新作。東京の都市の一隅をほぼ定点で観測して制作された作品ですが、定点観測について通常連想されるような、時間の流れにそって変化を追い、ある完成に至るものではありません。本書の連続するページの中で、時間の流れは順行や逆行を繰り返し、またカラー写真のパートとモノクロ写真のパートも交互に現われ、ページを繰る度にいつも新たな発見に満ちています。松江はこのような緻密な構成によって、写真の本質的な問題を孕みつつ、至るところで建設と完成と破壊が繰り返され、常に生成の途上であるという都市のあり方を描き出しました。 ページめくりの良さにこだわっての全編袋綴じ製本で、手の中で自在に展開できる造本も大変魅力的です。カラー/黒白、写真の同一性、時間の概念、都市のスクラップアンドビルドなど様々な観点において刺激的な一冊です。 倉石信乃氏による「定点観測再考―松江泰治『TYO-WTC』」も収録。
松江が伝えているのは、都市にはつねにすでに途上しかない、生成しかないことにほかならない。工事はつねにすでに、至るところで始まっている。終わってもまた再開。都市には、絶えざる破壊と建設の交替しかない。とりわけ東京という、緑の成分を著しく欠いた、無計画極まりないアモルファスな場所にあっては。ここには、遡行しうる起源も完成されるはずの未来もなく、ただ途上での生成が繰り返されているばかりだ。それを一定の時間の厚みのなかでつかまえようとする果敢なチャレンジが、『TYO-WTC』に結実している。―――――倉石信乃「定点観測再考―松江泰治『TYO-WTC』」
- 判型
- 148 × 188 mm
- 頁数
- 112頁
- 製本
- 並製
- アートディレクション
- 秋山伸
- 発行年
- 2013