Trace of Fog
“霧ヶ峰は名前の由来通り、しばしば濃い霧が立ち込める山だ。霧に覆われると境目が消え、どこまでも先に続いているような錯覚を覚えた”
― 阿部祐己
年間200日以上も霧が発生するという霧ヶ峰は、石器時代の古来より人が生活を営んできた場所である。それから後の中世鎌倉時代には武士が五穀豊穣を願い流鏑馬(やぶさめ)などの様々な神事を行った場所でもある。現代の今にもそれら神事は引き継がれている。
作家は過去の歴史から残る痕跡と現代の人の営みを、定点観測のような視点で写し続けた。過去から現在、現在から未来、我々はその現在のほんの短い瞬間に生きていると同時に、それを繋いでいることへの確からしさを作品から感じることができる。
時間の感覚をも失う深い霧の向こうには山の住人の気配が、霧が晴れた夜空には満点の星空、日が昇り光が野焼きで形成された平原に差し込む頃に、人々は目覚め新しい1日を再開させる。作家の卓越した構成力に繊細な色で描かれたこの写真集は、霧ヶ峰の歴史における儚くも美しい一葉の栞のようだ。
― 出版社説明文より
- 判型
- 254 x 228 mm
- 頁数
- 80頁、作品44点
- 製本
- ハードカバー
- 発行日
- 2018
- 言語
- 英語、日本語
- エディション
- 700