夜の星へ
ベルリンを拠点として国際的に活躍する野口里佳の『夜の星へ』は、近年光それ自体を主題にしてきた作家の、4年ぶりとなる作品集です。
野口は自身の住むベルリンの街でいつも乗るバスの窓から外の景色を撮影、そしてその一本のフィルムのすべてのカットを撮影順に構成しました。ビルの窓、街路灯、車やバスのライト、都会をなすさまざまな人工的な光は幻想的で美しい光のかたまりへと変容され、この星の上ではなく、どこか宇宙空間を遊泳するかのような不思議な感覚を呼び起こしてくれます。
あえて写真を選ばず、撮影した順番にまとめたこの作品集には、野口がバスに乗っていた時間そのものが写っているかのようです。この野口の試みは、すべての瞬間がかけがえのない時間であることを私たちに思い出させてくれるでしょう。
「 夜の星へ」 野口里佳
一日の終わり、いつも乗る2階建てのバスの中から外の景色を眺めていました。暗くなった通りにはいろんな色の明かりが輝いています。バスはゆっくり夜の星を進んで行きます。
写真を撮ろうとカメラを窓に近づけると、ファインダーの中に光の風景が次から次に飛び込んできました。どの瞬間もシャッターチャンスに思えて、私は何度もシャッターを切りました。
バスで撮った一本のフィルムのコンタクトを、撮った順番に一コマずつ見ていると、なぜか撮影しなかった瞬間のことの方が鮮やかに思い出されます。写真の秘密がそこにあるのかもしれないと思いました。
― 出版社説明文より
- 判型
- 161 x 223 mm
- 頁数
- 128頁、掲載作品77点
- 製本
- ソフトカバー
- 発行日
- 2016
- 言語
- 英語、日本語