父のアルバム
時を経て、重なり合う眼差し
父から生前に渡された一冊のネガファイル。2013年に父が他界した後、野口はネガを日付順に、暗室で少しずつ焼いていくことにしました。
「父の写真には母と私、弟と妹、父の育てたバラ、そして時折風景が登場します。被写体にぐんと近づいたものもあれば、遠くからそっと撮ったものもあります。背景にはあまり気を配ったりしません。でもその瞬間を撮りたかったのだな、という気持ちはよく伝わってきます。」
もう戻ってこないある瞬間がネガに焼き付き、暗室の中で浮かび上がる── 野口は父の視線を追いながらプリントする時間を通じて、「人はなぜ写真を撮るのか」という当たり前のことを初めて考えたと記します。時間の隔たりを超えて伝える、写真のもつ不思議な力。本書は、その写真を見るひとりひとりの記憶に触れ、時間の旅にいざなう力を湛えています。
「父の写真は父と家族のためのとても個人的なものです。けれど私がプリントしながら味わった幸福な時間は、写真の持つ不思議な力として、誰かに伝わるのではないかと思うのです。父の視線をなぞった私の視線がどこかの誰かに伝わり、誰かを少し幸せにできるといいなと思っています。」
ネガファイルは、父と母が互いを撮り合った新婚旅行の写真から始まっていました。
とくさ(緑)の表紙には、その一枚が貼り込まれています。
― 出版社説明文より
- 判型
- 276 × 216 mm
- 頁数
- 72頁
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2022
- 言語
- 英語、日本語
- ISBN
- 978-4-86541-145-4