饗宴 - 愛について 1996 ─ 2000
唯一なるものが生まれる前の闇の時間。未来への蠢き。
「写真を始めてからは、真剣に生きてきたと思います。
写真をすることを、真剣にしてきたと思います。」
― 映里
北京、そして京都を拠点として活動する国際的なアーティスト 「榮榮&映里」(RongRong&inri)。
本書は、映里がユニットとして作品を発表する以前の1996年から2000年にかけて、単独で制作した作品群である。
4つのシリーズから成る『饗宴』は、「本人が写っていてもいなくても、これはすべて、若い女性のセルフ・ポートレイトである。」(笠原美智子/本書所収テキストより)バブルが弾けた後の世紀末東京で、写真を通してひたすら自己を見つめ、葛藤し、知り得るあらゆる技法を注ぎ込みながら制作された作品を、今発表するのは何故か。
東京で一人暮らしを始めたときから一緒の、鉢植えのサボテン。作家は、肉の塊としてのサボテンに自身を投影し、一年に一度の開花に全身全霊で立ち会う。自身を直視し、内側から突き破るためにカメラを向けた「セルフポートレイト」。
被写体と撮影者という関係を超え、互いの野生を呼び覚ます行為としての写真「MAXIMAX」。
クローンに見る存在の耐えられない軽さと、それに拮抗するオリジナルとして吐くグレーの煙「Gray Zone」。
世紀末の東京の闇の影に吸い込まれながら、水銀灯の波長に侵される人間の歪められた存在感「1999 東京」。
20年以上前に別々に撮影された4つのシリーズは、今初めて「愛」という観点のもとに提示された。
写真と愛を巡る、尽きぬ問いの始まりとしての作品群を、プラトンの『饗宴』になぞらえながら。一冊の中の起伏、そこからの未来ー。
2021年の終わらない闇の時間に、自身の創作と生の道筋を見せることで、それでもなお生きることを肯定したいという思いが脈打っている。
「『饗宴 Symposion』に記録された映里の必死の形相は、躊躇いながらも自分の足で立とうともがく多くの現代女性の、何よりの力添えとなるだろう。映里の声が聞こえるようだ。『こっちにいらっしゃい。ひとりで立つことは時に辛くて大変だけれど、清々しい未来の扉を開けることができるよ』と。」
― 笠原美智子(本書所収テキストより)
― 出版社説明文より
- 判型
- 350 × 260 mm
- 頁数
- 168頁
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2021
- 言語
- 英語、日本語、中国語
- ISBN
- 978-4-86541-120-1