新版『日本村』1960-2020
日本各地の村や街、新旧入り交じった都市を訪れ、その風景を撮り続けた写真家の山田脩二。伝説の写真集『日本村 1969‐79』から40年、そのライフワークの集大成が刊行された。
1950年代後半に桑沢デザイン研究所で学んでいた山田は、大辻清司を通して写真と出会います。職業としてはグラフィック・デザイナーを目指しており、同校修了後、まずは印刷のプロセスを知るため凸版印刷に就職します。しかし独立すると、次々と舞い込んできたのはデザインの仕事ではなく、雑誌やカタログ用の写真の撮影だったと言います。この時期の山田は、東京で撮影をこなす一方、それ以外の時間は日本全国を気ままに巡る旅を繰り返しました。その眼と肌で会得した体験が写真家・山田脩二の屋台骨をつくりあげていきます。そして、60年代半ばから建築雑誌やグラフ誌に舞台を移した山田の写真は、次第に写真評論家や建築家、カメラ雑誌から注目を集め、発表の場がさらに広がっていきました。東京国立近代美術館での「現代日本15人の写真家展」(1974年)へ参加し、アサヒカメラの口絵を飾るなど、当時の写真界でその評価を高めながらも、山田は1983年末のミノルタフォトスペースでの個展を終えると「職業写真家終止符宣言」をし、淡路島に移転。20代の頃に立てた人生計画通りに瓦の製造に携わり、瓦師と名のり、分野をこえて活動を行っています。
「山田さんは、バウハウスをモデルに発足して間もない桑沢デザイン研究所、高度成長期の只中に膨大な生産を行っていた印刷会社に身を置き、高層ビルをはじめ数多くの戦後の日本を象徴する建物の竣工に立ち会い、東京オリンピックや大阪万博、学生運動を体感し、そして、風景論・都市論が熱気を帯びる何年も前から日本全国津々浦々を旅して回っていたという稀有な方です。カメラと自らの身体を通して、これらを経験してきたことが、山田さんの写真からひしひしと伝わってきます。そこには、特別な事件も、都市と地方という安易な二項対立も、失われつつあるものを嘆くセンチメンタルな感情もありません。」― 菊田樹子(インディペンデント・キュレーター)
- 判型
- 290 × 290 mm
- 頁数
- 442頁
- 製本
- ハードカバー、ケース
- 発行年
- 2020
- 言語
- 英語、日本語
- ISBN
- 978-4-582278-34-7