Sudiru
祖父がひとりで撮りためていた宮古島の秘祭の写真を、孫でアーティストの新城大地郎が発見する。
そこから「スディル(再生)」を巡るふたりの長い対話がはじまった。
岡本恵昭(オカモト・ケイショウ、1937-2024)は、宮古島に根ざした禅僧であり、民俗学の先駆者であった。1960年代後半より狩俣集落を中心にフィールドワークを開始し、柳田國男、折口信夫、西田幾多郎らの思想に影響を受けながら、沖縄の民俗文化を掘り下げた。本書は、岡本が地方学(じかたがく)としての民俗学の実践の一環として、1960年代後半から1970年代後半にかけて撮影した、狩俣、島尻、池間島、西原、来間島、砂川の祭祀儀礼の様子を収録している。
研究資料という位置付けを超え、写真の本質を宿すように写っているのは、カミや自然に感謝し祈る人々の「あるがまま」の姿である。村落祭祀の空間は、外部の者はもちろん、集落の人々でさえ容易に立ち入ることのできない聖域であった。祭祀の尊厳を損なわぬよう、ハーフカメラを用いながら撮影された無私の記録 ── 外部からの観察でも完全な内部視点でもない ── には、 祭祀、自然、人々の営みが深く結びついた宮古島の精神世界が息づいている。真摯に祈るツカサたちの背中は、ただの風景ではなく、時を超えて生き続ける力強い「存在」として現れる。
また、孫でありアーティストの新城大地郎が、岡本恵昭の写真に藍や墨の書、ドローイングを重ねた作品も展開する。岡本の没後、著作とともに遺された写真、ノート、音源、遺物など貴重な学術資料は、新城によって大切に保管されていた。岡本の記録したその過去と、新城が生きる現在が交差しながら、新たな「蘇り」を生み出していく。加えて、民俗学者・島村恭則による「岡本民俗学」への学術的考察、写真家・石川直樹による寄稿からも、その「再生」が織りなされる。
タイトル「スディル」は、宮古島の言葉で「再生」や「蘇り」を意味する。変化し続ける時代においても脈々と息づく、静寂とダイナミズムと美しさを含んだ精神文化。岡本恵昭と新城大地郎の対話を通して巡る「スディル」が、現代に生きる私たちに「根」を見つめる契機を与え、多様な文化や価値観が交錯する世界に、新たな視座から問いを投げかける。
― 出版社説明文より
$47.72
税込- 判型
- 297 × 228 mm
- 頁数
- 152頁
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2025
- 言語
- 英語、日本語
- ISBN
- 978-4-86541-195-9