たね
ときたまは、出版社に勤務後、編集プロダクション社長、季刊写真誌『デジャ=ヴュ』発行人を経て、フリーのアーティストになりました。1993年よりコトバの作品をハガキに印刷する「ときのコトバ」を毎週制作し始め、2020年9月30日までに1108号発行しています。写真家がカメラで風景を切り取るように、コトバを使って世界をスナップする「ときのコトバ」 は、アーティスト・ときたまの代名詞とも言える作品です。活動はさらに広がりを見せ、2015年以降はプラ板を使って1500点以上の立体作品「プラたま」を制作しています。
ときたまは、2016年からiPhoneでスナップ写真を撮り始めます。「撮るために歩くんじゃなくて、歩いていて、たまたま撮る」、「「あっ!」と思ったら何でも撮る」スタイルで、青空、銀杏、桜、公衆電話、工事現場、レストラン、富士山、電車、パフェ、落とし物など、日常生活の中で目に映ったものはオールジャンルで撮影しています。撮影場所は、生まれ育ち現在も暮らしている東京・恵比寿や、渋谷・広尾・代官山・青山周辺の「お散歩コース」や、旅行で赴いた日本各地です。
2016年から、アフターコロナまでをカバーした2020年5月までの膨大なデータからプリントした約5000枚の中から、391点が写真集に収録されました。
ときたまは、「日々は、いつも と 面白い と たまたま の「たね」でできている」と語ります。iPhoneという、今や誰でも手にしているデバイスで、気負わず撮り続けられた写真群は、人生に偶然に降りかかる悲喜劇を肯定し、人間という存在そのもののおかしみを受け入れる軽やかさと祝祭感があります。それは30年近く制作を続けている「トキのコトバ」にも通じるものですが、それが画像となることで、さらにボーダーを超えていき、そのエスプリは鑑賞者へとよりダイレクトに訴えかけるのではないでしょうか。日常に潜む「たね」を見つける視点は、彩り豊かな人生を送るためのヒントと希望をもたらしてくれます。
- 判型
- 164 × 116 mm
- 頁数
- 398頁、掲載作品391点
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2020
- ISBN
- 978-4-600-00504-7