Print House Session セット

Print House Session セット

奥山由之

出版社:Print House Session

4冊組 / 表紙数種類有、ランダム出荷

Print House Sessionは、4つの印刷所、4人のデザイナーがそれぞれチームを組み、1人のアーティストの作品のアートブックを作るというプロジェクト。2019年に続き、今回が第二弾。
奥山由之の『Windows』(赤々舎、2023)を題材に、4人のデザイナーそれぞれの解釈を4つの印刷所の技術をもって形にしている。既刊の『Windows』を既に持っている人にもまだ触ってない人にも、全ての人に斬新な形の切り口がそこにある。

本プロジェクトは、出版社のroshin booksと書店のFlotsam Booksによって、企画・運営されている。

 

『Optical Tacitility / Windows』岡崎真理子 × サンエムカラー
*判型:297 × 210 mm、頁数:32、ソフトカバー

表紙に触った瞬間、そのテクスチャーの肌触りにぞくぞくさせられる。奥山の『windows』の曇りガラスといえばいいのだろうか、凹凸がある窓ガラスの質感を3Dで再現するという荒技から始まる。
テクスチャーのある透明なページを捲ると本来の印刷の部分である作品が露わになるのだが、サンエム独自のチューニングが施されたジェットプレスというインクジェットの化け物のようなプリンターが描く質感がえぐい。えぐいというとマイナスのイメージだけども、えぐいと言わざるえないくらいに立体的な印刷に仕上がっている。
おそらくデザイナーの岡崎が狙った部分は感情の排除。テクスチャーに針を思いっきり振ることで、作品から感情を取り払い見る人の視線を印刷の質感に集中させる。そしてそこに展開されるのは圧倒的にハイレベルな印刷。岡崎の振るタクトの合図で一気に畳み掛けるサンエムの印刷力。
32枚のページ数とは思えない存在感を感じさせてくれる。

『Reading / Windows』田中義久 × 東京印書館
*判型:163 × 112 ㎜、頁数:208、ハードカバー

手にひらサイズの丸背の上製本。what is a “window” ?から始まるテキストの型押しが印象的な表紙。開くと何も書かれていないページが連続して続く。そう、これはアートブックというよりノートブックなのだ。何かを綴るためのノートブック。誰かへの言葉、自分への言葉、誰へともないとりとめもない言葉を綴るための1冊。連続を断ち切るかのようにそこに挿入されるwindowの写真が、言葉の記憶を繋いでくれる。
東京のどこかの街角でwindowを目にするたびに、そこに綴られた言葉を思い出すだろう。奥山は“窓を見つめることは、見知らぬ誰かと見つめ合うことに等しいと感じた”と。このノートブックはその先に踏み込み、さらに個人的な感情を大事に包み込むような形へと進んでいる。
ここに綴じられたセンチメンタルな窓は、どこにでもないこれを手にするその人だけの窓だ。大切な誰かに贈りたい1冊。

『xx✳︎✳︎ / Windows』アーロン・ニエ × 山田写真製版所
*判型:210×380㎜、頁数:64、ソフトカバー

アーロンのコメントにあるように、ガラス窓の模様にフォーカスを置いたページネーションで構成されたアートブック。また、ガラス窓のこちら側と向こう側からを意識された装丁で、2本の糸で綴じられた束を青い面、白い面、どちら側に折り曲げても一つのストーリーが成立するという仕掛けが施されている。
マット紙で印刷された「窓」はしっとりとした湿度を持ち、窓を外側から見つめる人の感情、窓の向こう側の人の気配など、さまざま揺らぎを感じさせてくれる。
綴じられた糸の結び目が青面では青い糸が、白面では白い糸が見えるような形になっており、製本所の高い技術力も見どころ。

「この作品は、奥山由之のカメラレンズを通して捉えられた窓の似た形状の「x」と「✳︎」の繰り返しパターンを象徴しています。このジンの綴じ方は、窓が両側から見ることができるようにデザインされており、指定された開始ポイントなしに両側から読むことができるようになっています。」
― アーロン・ニエ

『Vague / Windows』上西祐理 × Live Art Books
*判型:297 × 210 mm、頁数:66、ソフトカバー

タイトルのvague (漠然)という言葉の通り、ふわりとした空気を纏った写真のセレクトと印刷。それぞれのチームはakaakaから出版された『windows』に収録された724点から写真をセレクトしているが、例えばサンエムカラーのチームのような光がはっきりと刻まれた写真のセレクトに対して、ここまで対照的な選び方をできることに驚いた。
windowsという力の塊のような質量の塊をvagueという面で受け止め包み込む。その柔らかさの中に力強いしなやかさもあるという印象を受ける。
製本としては、綴じることなく折った紙を重ねていく形。広げればB3程度の大きさのものからポストカードサイズのものまでさまざま。使用している紙もマットからコート、全面ニスからテクスチャーを持たせたものまで、多種の紙を織り交ぜている。
まさしくvagueという言葉通りの定形があるようでないような、触る人を楽しませてくれる造本設計。これを構築するのに見えない綿密なストラテジーがあることは明白だ。

― 出版社説明文より

キーワード: アーティストブック

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発行年
2023

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