鑑と灯し火
此岸と彼岸、愛と哀の心性と視線の感応
― 森山大道
父の居る病院へと向かう。
明かりの消えた廊下を歩き、病室に入る。
小さな蛍光灯の下に「父」という自我を失った一人の小さな人間に出会う。
いずれ来る私の姿を見ながら、答えのない対話が始まる。
周りには人形の様に一人一人の小さな人間達が目をただ目開き、あるいは静かに眠り、いずれ来る死の時を為す術もなく待っている。
彼らは私に伝える。言葉ではない。
人が辿る道、その最期は無残で残酷です。
私は無力です。
何とかならないものなのでしょうか。
どうにもならないものなのでしょうか。
時は過ぎ去ってゆきます。
過ぎ去った時の中に、言葉のない出会いの中に問いかけます。
答えのない対話を重ねます。
何かを伝えたい、何かを残したいと思います。
私が出来ることはもはやこの本の中にしかありません。
一人の人間の死から一つの生きたものを生み出したいと思います。
出会いと対話、気付きの中から何かが生まれ、伝わり、目に見えずとも何かのカタチをして残るもの。
目に見えるかたちで、目に見えないかたちで、私に何かを語り、伝え、残してくれた人々に感謝します。
― 布施直樹、あとがきより
- 判型
- 190 x 257 mm
- 頁数
- 104頁
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2015
- 言語
- 日本語、英語
- エディション
- 500