情民
失われた〈時〉を悼むモノクロームの陰翳
海を抱き海に抱かれた島々の失なわれゆく祭祀世界を、他の追従を許さぬ強度で捉えつづけた求道者の早すぎる死より10年。
無名の肖像にその〈受視〉思想の核心を焼きつけた「情民」、永遠の若き日を生きる遺影のなかの夫と、それぞれの戦後を生きる残された妻の肖像が沖縄の戦禍を表象する「戦争未亡人」、ふたつの連作をはじめて集成した114点。
― 出版社説明文より
比嘉 康雄(ひが・やすお/1938-2000)
1938年、フィリピンで沖縄からの移民の子として生まれる。第二次世界大戦終戦後、家族と共に沖縄に引き揚げ、1958年にコザ市(現・沖縄市)のコザ高等学校を卒業。卒業後は嘉手納警察署に警察官として勤務し、鑑識の業務でカメラを手にする。1968年にアメリカ軍の嘉手納空軍基地で起きたB52爆撃機墜落事故を契機に警察官を辞め、東京写真専門学院(現・東京ビジュアルアーツ)で写真を学んだ。1971年に卒業し、個展「生れ島・沖縄」(銀座ニコンサロン)を開催。翌年、『生れ島・沖縄』(東京写真専門学院出版局)を刊行。1976年、「おんな・神・まつり」で第13回太陽賞を受賞。1979年、『神々の島 沖縄久高島のまつり』(共著、平凡社)、翌年、『琉球弧 女たちの祭』(共著、朝日新聞社)を刊行。1993年、『神々の古層』(全12巻、ニライ社、1989–93年)により日本写真協会賞年度賞を受賞。2000年、『日本人の魂の原郷 沖縄久高島』(集英社新書)を刊行。没後の2001年、那覇市民ギャラリーで「比嘉康雄回顧展 光と風と神々の世界」が開催。2008年、「沖縄・プリズム 1872–2008」(東京国立近代美術館)に出品、2010年には『比嘉康雄写真集 情民』(未来社)が刊行された。2010–11年、「母たちの神─比嘉康雄展」(沖縄県立博物館・美術館、IZU PHOTO MUSEUM)が開催。同展に合わせて『母たちの神─比嘉康雄写真集』(出版舎Mugen、2010年)が刊行された。― 東京都写真美術館「TOPコレクション 琉球弧の写真」より
- 判型
- 234 × 258 mm
- 頁数
- 掲載作品114点
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2010
- 言語
- 日本語
- ISBN
- 978-4-624-90022-9