ハットリくん
わたしの家にはハットリくんという猫がいます。
ハットリくんは、2011年の東日本大震災の時、福島の双葉町から疎開してきました。
わたしは当初、猫の写真なんてさほど興味がなかった。
しかしハットリくんと一緒に過ごしていると、孤独と同時に漂う愛しさに徐々に惹きつけられていきました。
ある日、フィルムの最後の数コマに写した写真を見た時、自分にそっくりな顔をしたハットリくんがそこにはいました。
フィルムのボロボロの粒子の向こうから命をへばり付けるように、じっと見つめている、その瞳。
故郷を遠く離れ、すっかり飼い慣らされてしまった本能が、わたしだけに垣間見せる野生の表情がそこにはありました。
「愛するものを撮ること」
小さな窓の向こうに流れる景色にわたしたちは身を任せ、いつまでも夢中のまま写真を撮っていたい。
でも、猫の時計はすごく速いスピードで進むから、わたしを追い越して先に止まってしまうことも知っている。
わたしはその時までこの不思議で捕まえどころない生き物を、愛し、わたしにしか見えないハットリくんを捕まえたい。
この写真集は、わたしとハットリくんが歩んできた愛の物語です。
― 出版社説明文より
- 判型
- 195 × 230 mm
- 頁数
- 104頁
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2018
- ISBN
- 978-4-8021-3120-9