Diana Hong Kong 2014
香港生まれの写真家・黃勤帶は、約10年前に「雨傘運動」の様子を香港製のトイカメラDiana Plusで撮影していた。
黃の写真家仲間は、なぜそんな重大な瞬間にトイカメラのDiana Plusを使ったのかと質問した。「香港の写真集を制作するために、いろいろなカメラを試していたとき、突然、社会運動が起こり、その様子を記録するためにDiana Plusを持ち込んだ」と黃は答えている。
ネオンに照らされた高層ビル群に囲まれた香港の街で、Bシャッターと専用フラッシュという組み合わせで、葛藤の写真を撮ったのだと黃は振り返っている。
― 出版社説明文より
黄勤帯の12冊目の写真集『Diana Hong Kong 2014』は、一見彼の『香港地2002-2007』や『Vajrayana』のような日常生活の観察の作品に見えたが、近年香港で起きたことがたくさんありすぎて、この写真集を読むまでは2014年に起きた雨傘運動のことや、当時の衝撃的な気持ちを忘れかけていた。
『Diana Hong Kong 2014』の作品は黄勤帯がトイカメラのDiana Plusで撮影したものだが、タイトルの「ダイアナ」に含まれる意味はそれだけじゃないかもしれない。しかしカメラのDianaの歴史はかなり面白い。黄と同じように50、60年代に香港で生まれ、グレートウォール・プラスチック・カンパニーで生産された。それは香港の人々が家でプラスチック造花の内職をしていた時代だ。アメリカの写真家Nancy RexrothがDianaで撮影した風景を『IOWA』という写真集で出版したことや、その後ロモグラフィーとのコラボでこのメイド・イン・ホンコンのカメラが一世を風靡した。光が漏れることやボケることなどの欠点はこのカメラの生産が停止した主な原因だが、他人にとっての欠点はアーティストにとってのアイディアだったりする。そしてこのカメラの浮き沈みする歴史は香港の歴史と重なって見える。
黄の『Diana Hong Kong 2014』を読むと、彼の『Bardo Hong Kong 2019』、『’89広場の日々』、『Xinjiang 1980』などを読んだときと同じ気持ちになる。どの順番で読んでも実際同じ物語が見えてくる。何回読んでも感動するし、写されている事件も写真集で振り返ると新しい発見が出てくる。
― Lam Yik Fei(The New York Timesなどで活躍する写真家)
- 判型
- 180 × 180 mm
- 頁数
- 264頁、掲載作品257点
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2022
- 言語
- 英語、日本語
- エディション
- 600