Berlin / Deep in thought
ベルリン―言葉の響きと共に、それは、ある種の感慨をもたらす。
歴史的な葛藤、政治的なせめぎ合い、地理的な浸食が背景に見え隠れ、
他の都市にはない、ピリピリ或いはヒリヒリとした神経に触れる独特の空気感を感じる。
張り詰めた緊迫感の中、五感を研ぎ澄まし、発せられるメッセージ、
イメージの断片を漏れなく拾い集め、多元的に多重的に捉えた。
そして、そのプリントの集積に分析と考察を加えたものが1冊してまとめられている。
ベルリンを撮るべく街を歩く行為は現実だが、それとは別の時間軸―過去そして未来が、
並列或いは同居しているかのような錯覚を覚える。
それはあたかも見上げたベルリンの空で幾重にも交差する飛行機雲のように…
時間軸がクロスして、多次元的カオスがスパイラル構造で地上に落下してくる。
ベルリンにおいて、地上に降りてくるものは天使だけではないということだ。
例えれば、街角を曲がると、18世紀の友人とばったり出会うような感覚。
そして、彼は足早に通り過ぎ、結果的に過去が現在を追い抜く形となる。
過去・現在・未来、3者の関係性はヒストリカルな序列に収まらない。
今この一瞬の現在も、過去から見た未来として、或いは未来に追いつくべき過去として、
現在は刻々と過去となり積載されていき、未来は現在として留まる間もなく消耗される。
そして、未来にインクルーズされているはずの希望的な語彙は随分と目減りしたようだ。
過去・現在・未来、3者の関係性を思う時、我々が現在を生きるエリアとは、かくも広きものなのか。
BERLINを舞台に展開される様々なファクターについて深く心静かに熟考する、
主人公不在の<過程の物語>として…始まりもなく終わりもなく…ふと立ち止まる、
BERLIN? そこはBERLINであって、BERLINでないところ、
そして、又リスタートする…始まりもなく終わりもなく…永遠に完成する事もなく…
BERLIN/DEEP IN THOUGHT ダブルネームの意図は、
ベルリンをひとつの素材、ステージとして設定、その中に沈潜、黙考する事で、
過去・現在・未来を往来し、時間軸を超越する事に依り、その関係性においても
物事をより掘り下げて捉える事が可能となる。この方法論をもってグローバルに、
現在を生きるすべてのエリアに当てはめた問題に拡張して、
現時点において個々人が世界観を捉え直すべく、再考を促す試みを狙いとしている。
- 判型
- 305 x 226 x 55 mm
- 頁数
- 492ページ
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2014