1973
視るもの、見えるもの、感じるもの、全てが未知で新しく、そして日本とは全く違う震える光がそこにあった。
1971年7月、パリへ着いて以来、驚きの連続から、ようやく観察する冷静さを持つに至った。空の青は宇宙の暗黒に繋がっていく蒼だった。乾燥した空気のなかを幾筋もの光の矢が石の建造物に向って突き刺さってていく。光の波動攻撃。
見た事も感じた事も読んだ事も想像した事さえない世界。光の粒子が眼に飛び込んでくる。光は粒子だ。本当に驚いた。
光がこの手で摑み取れそうな気がした。そう、この時から私の光への旅が始まった。子供の頃の様々な不可解な視覚的な記憶が「光」という一語に集約され、私の中に収まるべき居場所を見出した。パリの学生街、カルティエ・ラタンのエレベーターもない7階の屋根裏部屋から1973のストーリーが始まった。
光を留めるもっとも優れた手段がフイルムであり、光を表現できる媒体が印画紙だった。夜も昼もカメラを携えてパリを、そしてロンドンを歩き回った。後年、東京での個展の際の紹介文にデザイナーの倉俣史郎氏が田原桂一は2度シャッターを切っている。1度目はカメラで、そして2度目は暗室でプリントを焼く時にと。
― 田原桂一、作家ステートメントより
- 判型
- 216 x 280 mm
- 頁数
- 40頁、掲載作品25点
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2016
- 言語
- 英語、日本語
- エディション
- 1000