叢
ひとと衣食住に割り込むことを拒否されて、それを取り囲むように叢がある。叢は、雪や雨や風や日の光に、その有様を変える。
わらすこ(子供)たちは、山肌の斜面の雑木や叢でターザンごっこをやり。秋の名月(おめげっつぁん)には薄などを取りにいった。
逆巻く毛っこ掻き分けて――蔦の覆った、その暗がりに心が落ち着いた。親に怒られたとき。挫折を味わったとき。アア、オイ(私)はひとりぼっちなんだと逃げた場所。恐ろしい場所。やがて叢の中の栗の香は大人になったことを知らせた。
ひとと衣食住がそこにある前は、叢が在った。
― 橋本照嵩、あとがきより
- 判型
- 290 x 203 mm
- 頁数
- 48頁
- 製本
- ソフトカバー
- 発行日
- 2016
- 言語
- 英語、日本語
- エディション
- 500