日本海
「日本地図をひっくり返して大陸側から見ると、日本海は大きな湖のようだ。」
「日本海沿岸はかつて大陸からの文化が入ってくる表玄関だった。」
1947年生まれの百々俊二が好奇心の塊となり、8x10の大型カメラをかついで、生命の気の向くままに、人間と一体関係にある「風土」を旅をした。
三脚を据えて、カメラを真ん中に被写体と相対する。
萩市のしだれ桜の下、佐渡の海が見える棚田、吹雪の利尻島。それぞれの土地で根を張り悠々悶々と生きているひとがいる。いつの時代もそうであるように、そこにいる、と感じられる少年少女、子供たちとの嬉しい出会いもそこに加わった。そうして日本海沿岸を撮られた写真は、その土地を故郷とする人々の堂々とした姿、風土の記憶をモノクロームにうつした、日本文化の源の記録の一冊である。
この映像作家の眼には、あの西欧ルネッサンスの画家たちが発見した遠近法に抗う本能的なまなざしが宿っているのではないか、とさえ思う。かつて、その同じ遠近法に反逆したのが北斎だった。(中略)カメラは水平に向けられていても、そこに写しとられる光景はいつのまにか垂直軸に沿った俯瞰構成にすり変っている。百々俊二さんは、北斎と蕪村を両睨みにして立つ、現代では珍しくなった写真家であるといっていいであろう。
― 本書への寄稿、山折哲雄「両睨みの眼」より抜粋
- 判型
- 260 × 260 mm
- 頁数
- 324ページ
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2014