あめつち
わたしたちはたしかになにかを共有していて、同じ時間を生きている。
2012年、東京都写真美術館にて開催された個展「照度 あめつち 影を見る」に出品された新作《あめつち》。展示された作品は一部でしたが、その内側から輝くような力強さと圧倒的な存在感は、見る者の心に強い印象を残しました。
本作では、川内作品を特徴づけていたローライフレックスによる6×6の正方形の画面から、撮影までに作業時間を必要とする4×5へと、被写体に敬意を払いとらえるために、あえてそのメディアを変更。阿蘇の野焼き、プラネタリウム、夜神楽、自宅から見上げた空、そして嘆きの壁と、わたしたちみなの住むこの地球にしっかりと根を張り、向き合って、世界をとらえようとする意欲作です。
きょう自宅の窓から見る夕焼けはきのう見たそれと似て非なる。毎日がきのうと違う新しい日々の連続であるという事実。遠い異国で祈る人たちと東京で夕焼けを眺めながら一日の終わりに感謝する自分となんのつながりもないなどとなぜ言えるのだろう?わたしたちは、同じ恵みを共有しながら、いくつもの困難な壁を乗り越えなければならない仲間だ。それぞれの人生の軌跡が直接交わることはなかったとしても、いま同じ地上に存在するわたしたちはたしかになにかを共有していて、同じ時間を生きている。
2013年1月
川内倫子
※本書はAperture(米)と青幻舎の国際共同出版であり、日本語版を青幻舎が刊行します。なお、2012年に東京都写真美術館で開催された個展と同時に発売した『照度 あめつち 影を見る』に掲載された《あめつち》はシリーズの一部であり、本書はその完全版です。
- 判型
- 345 × 240 mm
- 頁数
- 160頁
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2013