this year's model shashasha edition
写真というのは目の前の現実空間をカメラという光学機器によって二次元へと変換することだ。
この変換の際に起こる変化は劇的で、精巧にコピーすればする程実際の目の前から遠く離れていくという矛盾を持つ。
平面へと変換されてしまったものをイメージと呼ぶなら、このイメージとなってしまったものにこそ興味がある。
感情や、物語や、論理を超えてイメージとなってしまい写ってしまったと呼ばざるをえない何か。
このイメージになぜ心が動かされるのか、何が心を動かすのか、言葉を超えて発生するその力の在処を探りたい。
まとめるための動機ではなく、撮り続けるための、自分が驚き続けるための動機はイメージの力を信じるところにしかない。
何を、どうして、どのように、撮るか、ではなく、なぜ、何が、どうしてそう見せるのかという写真になった後のありようにこそ、彼の対象やまなざしは一貫して向けられている。
彼の写真からは読み取りやすいコンセプトや物語といった要素をダイレクトに感じるとることはない。それは単にコンセプトや意味がないということではなく、撮ること、定着され方そのものに執着することが写すという行為の発動であり、コンセプトになって突き動かされているように見える。切り取るという行為は、見た事がないもの、その先にある物を見てみたいという彼の動機そのものと同調し定着されていく。彼の作品に見られる透過、反射、反復、レイヤー等が絡み合う写真はまさに写す動機そのものを体現し、イメージとしての意味をすり抜け単に一つのビジュアルの複合体として私たちの前に提出される。
今回制作された作品集はこの特徴的な視点を端的に構成することで、ページを開いて行く時の関係性を捨てさり、一枚一枚のビジュアルの持つ力にフォーカスさせる作りになっている。そしてその写真の束をアクリルに単純に挟み込んだようなオブジェクト(作品集)はより写真のイメージをシャープに増幅させ、彼が切り出す作品のありようそのもののようである。
シンプルで建築的なアプローチのデザインはedition.nord秋山伸によるもの。
-出版社RONDADEのステートメントより
- 判型
- 257 × 364 mm
- 頁数
- 80頁
- 製本
- アクリルカバー
- 発行年
- 2014
- 限定20部