piece
自身の近しい人の死をきっかけに、死の側から生を、生の側から死をのぞく作業を続けてきた大橋愛。かつての隆盛の影を残したまま、取り壊されることすらなく廃墟となった軍艦島、おそろしいほど美しい自然、時間によって音も立てずに暴力的に分断される日常の風景。大橋の目を通して映された世界は、時として残酷ともいえる生の営みを粛々と浮かび上がらせ、生が内包する「無」ともいえる死の気配を感じさせます。失われたかけら(=piece)をさがすようにシャッターを切り、生まれた写真は、生の対局にある死ではなく、当たり前にある死の存在をやさしく語りかけます。そして時を経て、死者への感情がかわりゆくように、写真もいつしか普遍的な世界へと昇華され、見る者自身の記憶のかけらにやさしく静かな時間を与えます。 震災を経て、生と死がわたしたちにとってより身近なものとなった今、大橋が「世に出そうと思った」という本作は、見る者ひとりひとりの物語ともいえるでしょう。
― 出版社説明文より
- 判型
- 287 x 212 mm
- 頁数
- 80頁
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2013