青空の月 <神戸・阪神間 2010-2013>
ある夜、夢を見ました。我を忘れるくらいの喜びの中で撮影している夢です。流れるように動き回って、手にはローライフレックス75mm付きを持っていた。
その少し前から正方形の写真はお休みしていて、35mmや6x7フォーマットを試してみたり、違う道を探していたのですが、そのローライの夢を見た朝に、ああ、やっぱり6x6でやってみよう、と思ったのがこのシリーズが始まったきっかけです。
ですから、このシリーズには喜びを撮っていこうという明るさがあって好きです。
このたび大阪へ引っ越しすることになって、自分のバックグラウンドが5歳から40年以上過ごした阪神間の空気や文化にいかに強く裏打ちされていたかを意識するようになりました。
小学校へ通う道ぞいに谷崎潤一郎が住んでいたと言う家があって、今でも本棚のトップに君臨しているし(オールタイムベスト制の本棚なので)、大学を決めたのは稲垣足穂の小説に出てくる学校だったから、、というような、いちいち阪神間モダニズムに憧れていた青春時代でした。
今では住宅地の印象が強い土地かもしれませんが、歩き慣れた道にたくさん面白いものが見つかって楽しい撮影でした。見慣れたところに新しい物事を発見することは写真をやる中で一番面白いことの一つだと私は思います。
<旧版との違い>
今回は神戸・阪神間、そして撮影年も限定することで、より具体的な写真を収録できるように工夫しました。
― 野口靖子
- 判型
- 250 × 254 mm
- 頁数
- 168頁、掲載作品86点
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2022