極東ホテル
新しい旅の写真集誕生!!
東京都台東区、かつて「山谷」と呼ばれ日雇い労働者の町として知られていたこのエリアにある外国人旅行者専用の簡易宿。鷲尾和彦は、この一軒の宿へやって来るバックパッカーたちのポートレートを5年間にわたり撮影した。のべ数百人の旅行者との出会い。彼らの言葉に耳を傾け、互いの言葉の向こうに残されていった記憶。
「そして、その『響き』が僕を強く共振させる時、僕たちはともにこの世界を漂い続ける小さな欠片であり、異なる場所でそれぞれの生を生きてきた者同士なのだという愛しさが込み上げて来た。」(あとがきより)
彼らのポートレートに刻まれる不思議な静謐と体温は、未来への希望と不安が入り交じる私たち自身の肖像でもあり、従来のドキュメント写真を超えた普遍性を獲得している。遠くへ何かを探しに行くことだけが「旅」なのではなく、訪れては去る彼らの姿を見つめる中にこそ、新しい「旅」の写真の可能性があることを「極東ホテル」は静かに指し示している。
「東京の『極東ホテル』にしばらく滞在してまた去っていったこれら若い人々の顔に浮かんだ放心と当惑に、ぼくは共感を覚える。同じ思いを共有してきたと思う。世界は実はたくさんの地名が林立する森だ。その森のどこかで、ディディエよ、モスターファよ、ブレーメンの二人の少女よ、名前なき者たちよ、ぼくはきみたちに会った覚えがある。どの木の近くだったかはわからないけれど、ぼくはきみとすれ違ったね。」(池澤夏樹 書下ろしエッセイ「寂しい惑星」より)
- 判型
- 257 × 184 mm
- 頁数
- 96頁
- 製本
- ソフトカバー
- アートディレクション
- 北川一成
- 発行年
- 2013