香港 2019
2019年、香港島の大館當代美術館で開催されたサイバーパンクをテーマにした展覧会「PHANTOM PLANE 幽霊維面」に参加する事になり、数度に渡って香港を訪れた。
香港を訪れたのは1994年以来、実に25年ぶりである。前回は中国への返還直前、初めての海外一人旅であった。
展覧会への参加だけではなく、記憶を辿りながら再び街を撮りたくなるのは当然の事だ。
僕は、矢も盾もたまらずにカメラを手に民主化デモに揺れる香港の街に繰り出していた。
ちょうどこの時期、民主化運動のデモの嵐はピークに達しており、必然的に自由を叫ぶ大群衆の行進や若者達と警察の激しい闘いの壮絶な光景を目撃する事になった。
12月に開催された老若男女数十万人によるデモ行進では、見た事もない数の人間が巨大なうねりとなって大河の様に流れていた。
日の暮れた後も、途切れる事のない人々がかかげるスマホライトの無数の光は、生涯忘れられないであろう胸を打つ光景だった。
勇武派と呼ばれる過激な若者達の抗議活動の現場では、筆舌に尽くし難い激しいエネルギーと暴力が渦巻いていた。
若いデモ参加者が大勢の機動隊に袋だたきにされ拘束される姿には大きなショックを受けた。
僕自身も催涙ガスにむせび、機動隊にサーチライトを直射され、身体的な消耗と恐怖すら覚えながらの撮影となった。
強大な武力を持つ権力によるなりふり構わぬ暴力は、同じ時代の現実の出来事とはにわかに信じられなかった…。
― 中藤毅彦
- 判型
- 200 × 200 mm
- 頁数
- 132頁、掲載作品104点
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2020
- 言語
- 英語、日本語
- エディション
- 700
- ISBN
- 978-4-910244-02-0