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憂鬱な雨が続くある夜、どこかで花火の上がる音が聞こえた。ベランダに出ると遠くの空の下の方で微かに光る。
毎年庭先で見ていた河原の花火大会も例年8月開催だったけれど気候変動のためとうとう10月に変更になった。今年はコロナの影響でそれも中止。
2月、私の写真展のトークイベントでお招きした中谷宇吉郎雪の科学館の現館長である古川先生から、宇宙のとある惑星の大気中に水蒸気の存在が確認されたことを聞く。
もしかしたら宇宙でも雪が降るかもしれない。
温暖化が進み悪循環の渦にある地球の現状と交互に、頭の片隅で誰もいない暗い空間で舞う雪を思い描く。
「habitable zone」
いつか人類はかつては美しかったこの土地を逃れて旅立つのだろうか。
残された私たちは様々な思いと願いを載せて花火を打ち上げるかもしれない。
外出自粛中の長梅雨の日々にそんなことを想像していた。
― 藤田はるか
- 判型
- 297 × 210 mm
- 頁数
- 40頁
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2020
- 言語
- 英語、日本語