Fuzhou
「私が馬氏に初めて出会ったのは2016年11月でした。その15年前に馬氏は新しく建設されたダムによって、ふるさとである中国・江西省の抚州(ふじょう)の一部がもうすぐ水底に沈むことを知りました。明朝や清朝の石づくりの邸宅や周囲に 繁る樹齢千年級の木々も永遠に失われてしまう。この事態をなんとか回避しようと馬氏は奮闘しました。」 ― 井津建郎
一部でもいいからふるさとを救おうとした馬氏は思い切った行動に出た。このためだけに何百キロも離れた場所にリゾートを建設し、沢山の建物を物理的に解体し、一万本を超える木々と一緒に移送して再現した。この歴史ある村に残された荘厳な邸宅や伝統的建造物を後世に残そうとした一人の男の情熱に感動した作者は、この写真プロジェクトを立ち上げた。水没を免れた村でも多くの若者は大都市へ職を求めて去り、村には老人だけが残る。彼らはそこで生まれ、先祖がしたのと同じ場所で生活し、死にたいと願う人達がまだ暮らしていた。祖先の霊を祀った祭壇が残っている家も多かった。祭壇の替わりに毛沢東主席の古いポスターを掲げている家もあった。家と共に古びていった、文化大革命時代を象徴するレーニンやマルクスの古色蒼然とした写真も飾られていた。抚州はダム建設の前にここで生きた人々の生活の名残を今に伝える象徴的な場所になった。こうしてできた「抚州・忘れられた大地」は、過去への懸け橋となる可能性を持ちながら、文明発展という大義の陰に消えていった地球上の様々な場所を想起させる。打ち捨てられた村、荒廃した家屋、最後まで残った住人たちは、人がそこに生きていた証である。
― ディストリビューター説明文より
- 判型
- 300 × 220 mm
- 頁数
- 90頁、掲載作品71点
- 製本
- ハードカバー、ケース
- 発行年
- 2021
- 言語
- 英語
- ISBN
- 978-1-59005-542-7