Where I Am Act 1 & 2
ロンドン、オスロ、ユヴァスキュラ、ヨーロッパ各地。
写真家・石田満理佳の1年間の留学と旅の記録、第一幕(Act 1)と第二幕(Act 2)。
『Act 1』は、移動する中で見た風景や住むという生活を通して感じた空気、そこで過ごした日々の断片を収めたものだ。
どこにいても、私は私。どこに行っても、状況に圧倒されても、光を追い続けシャッターを切る行為は、日記を書くような感覚だった。自分の存在を忘れないために、その場所、その瞬間に感じた「今」を、写真とともに閉じ込めた。
ノート紙にメモ書きされたようなテキストとサイズの異なる綴じ方で配置された写真たちは、まるでその場で書き留めたかのように無造作で、手製本の温かさを感じさせる。写真とテキストが一体となり、ページをめくるごとに異なる空間と時間を旅する感覚を味わえる。
10月に行った頃には、ロンドンは天気が悪かった。
ギリギリまで家が見つからず、シェアハウスも初めてだった。
幸い、窓が大きかった。スーツケースを机にして、なるべく毎日外に出た。
どこにいても、私は私。どこで踊っても、自分の踊りはある。
ロンドンに来たときはカレンダーはまっさらだった。日本にいた時は、毎日詰まっていた。
なんだか爽快だった。
『Act 2』では、ノルウェー・オスロでの滞在中に捉えた太陽の光を用いて制作したサイアノタイプ写真と、スクエア判のモノクロ写真によって構成される。モノクロ写真には、ロンドン、ユヴァスキュラ、そして撮影しながら歩いているうちにいつの間にか2周(6km)してしまったオスロの湖が映し出され、それぞれの場所で過ごした時間と風景が交錯する。
深みのある青と厚みのある紙の手触りが融合し、冬の北欧の希少な太陽の光を直接感じ取るような特別な存在感をもたらすサイアノタイプ写真と、静寂と儚さを切り取りながら異なる場所での体験や記憶を描き出すスクエア判のモノクロ写真が収められている。
さらに、ノート紙にメモ書きされたようなテキストと写真が重なり合い、ページをめくるごとに生活の中のでの北欧の自然や都市を感じ取れる構成となっている。
Act 1に続く「滞在先の日常」の記録であり、サイアノタイプならではの時間の移ろいを通して、海外生活の記憶と風景を新たに捉え直す一冊である。
冬のオスロとユヴァスキュラの太陽は貴重だった。
学校でも日が出るとみんなで浴びに行く。夏が来るにつれて、その貴重さが薄れてった。
初めて海外でサイアノをやった。
綺麗にやることじゃなくて、太陽の光で青くなる青さを楽しんだ。踊りもそうだった。
綺麗に踊ることじゃなくて、自分がいかに表現に乗れるかだった。
― 石田満理佳
デザイン:本多万智
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2024
- 言語
- 英語、日本語
- エディション
- 50