植田氏を訪ねて

一九九三年の秋、ジェレミー・スティグターは写真家・植田正治氏を訪ね、氏が人々に忘れがたいほどの印象を焼き付けた《砂丘》という場所で、彼の写真を撮らせて頂きたい、という旨の内容に幾つかの質問を添えた日本語の挨拶状を渡した。

植田氏はジェレミーの質問に対し丁寧に手書きで応対した上で、少し話をした後に彼の友人の運転で砂丘へと向かった。砂丘に行ってみると風が強く、小さな折りたたみ傘は氏の周りをバタバタと飛び回る黒い鳥のようになってしまった。勇壮な植田氏は命がけで傘にしがみつきながら、風に負けぬよう、砂丘を登ったり降りたりしていた。

「ある意味、彼が創りだした画を、自分自身で演じるよう依頼され、その中で、身体を大いに動かしたこの《運動》を、彼は楽しんでいたように私の目には映った。というより、このような運動をさせてしまった私としては、彼の砂丘での陽気な姿は、彼が私同様に楽しんでいたことの表れであると思いたい。残念なことに、この撮影を実現させてくれた植田氏自身にその時の写真をお見せする機会はなかった。二〇〇〇年七月、植田氏の訃報を知り、その時の彼との共同作業で生まれた作品が私の記憶に蘇った。私は、二十世紀写真芸術の最高の表現者のひとりである植田正治という人物にオマージュを捧げるべく、あの秋の日の写真の展示会を開催し、そして「植田正治の記憶」として、写真集という形にしようと決めた。」
— ジェレミー・スティグター

― 出版社説明文より

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判型
204 × 170 mm
頁数
136頁、掲載作品56点
製本
ソフトカバー
発行年
2021
言語
英語、日本語、フランス語
エディション
700
ISBN
978–4–910244–03–7

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