南方褶皱 Live in the South Wind
記憶とは時間の「ひだ」のようである。建物の静かな廃墟を探ると、残された物や人類の痕跡を見つけることができる。
2000年代に入ってから、中国のほとんどの都市で都市化や大きな変化が起きている。南西部の国境地帯にある都市、南寧(ナンニン)も例外ではなく、前世紀に建てられたさまざまな家屋が次々と取り壊されている。ある世代の成長と生活に寄り添ったそれらの空間は、その後姿を消してしまった。
2018年に入ってから、朱宝蕾(ズ・バオレイ)は南寧のあちこちにある廃屋に何度も足を踏み入れ、そこに捨てられた物や古い写真を探した。朱にとって、これらの廃墟は都市と世代の歴史を担っている。街にひっそりと佇む古くて役に立たない廃墟は、長い時を経て沈黙し、時代の変化の中で傾き、波立ち、まるで地殻の「ひだ」がしぼみ、変形するようだった。
朱は本作『Live in the South Wind』において、読者を記憶の扉へと誘い、放棄と再構築、隠蔽と消失、変化と分離の中で刻々と変化する空間記憶に抗う。本書で提示されているのは、ノスタルジックな街の風景ひとつではなく、廃墟と化した街の建物の変遷、人と建築空間の相互作用、変化する建物の秩序、日常生活の流れなど、朱のイメージがリアルに提示されている。
本書は、写真集が特別に作られた函に収められている。函には3つの封筒があり、そのなかにも写真が収められている。
記憶を辿られるような、とても丁寧な仕様の本である。
― ディストリビューター説明文より
- 判型
- 275 × 180 mm
- 頁数
- 104頁、掲載作品92点
- 製本
- ソフトカバー、ケース
- 発行年
- 2023
- 言語
- 英語、中国語