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森山以降の写真家たち、たとえば、森山の弟子だったり、大なり小なり影響を受けている倉田精二、山内道雄、北島敬三、中居裕恭、尾仲浩二などの写真家たち の写真を、十把ひとからげに論ずるわけにはいかないが、一つだけいえることは、彼らのどのような写真であろうとも、森山の「無名性」への膂力の範囲にある ということである。延長戦にあることである。しかし、森山のワークショップで森山と出会い、その森山に勧められて初めて個展を開いたという水谷の写真は、 ただ一人、違う匂いを放っている。(中略)水谷の写真を眺めていると、特に気がつくことがある。写真の画面が、一点の焦点に収斂する印象を受けることであ る。つまり、パースペクティブ=遠近法を感じるのである。実は、この点こそが、水谷の写真の「新しさ」であり、「新しい風景」の出現というべきものなので ある。(中略)水谷の写真の新しさと凄さとは、何か。この「風景中心主義」ともいうべきパースペクティブとしての写真が、どのような逆接も孕むことなく、 フーコーのいう微細な権力とも無縁に過ごしているように見えることだ。それは、「表現」にとって現在、最も先端的な課題であるというべきであろう。
同写真集収録『「新しい風景」の出現ーー水谷幹治の写真について』(入澤美時)より
- 判型
- 268 x 235 mm
- 頁数
- 76頁、掲載作品62点
- 製本
- ハードカバー、ケース
- 発行年
- 2004
- エディション
- 1000