曇天記/写真
鈴木理策は2009年から月刊誌『東京人』(都市出版)での連載「曇天記」(文:堀江敏幸)に写真を提供、本書には、その連載のうち第7回から第100回(2009–2017年)の写真が収録されている。
堀江のテキストを読んでから撮影した(あるいは自らのアーカイヴから選んだ)というこれらの写真には、「海と山のあいだ」「SAKURA」「White」「水鏡」等、テーマに基づいて長期間撮影を継続するという普段の鈴木の制作行為からは決して垣間見ることができなかった、時に遊戯的でさえある、その時々の自由な日常的身振りが現れている。
また、主要シリーズからの変奏、あるいはそれらの新しい展開のための試行とも言うべき作品が含まれていることも興味深い。
「見ること」そのものへの接近を志向してきた鈴木は、常に作品をカラーで提示し、モノクロ写真がプリント作品として制作されることは無かったが、ここでは、連載の枠組から写真がモノクロームで使用されており、貴重なケースであることにも注目される。
印刷であること、そして「本」であることを根拠にこの世界に生まれた、鈴木の貴重な日記的モノクローム写真集。
雑誌連載の身軽さを表現するため、写真集には珍しい上質紙を使用しつつ、重厚な装丁を避けて本文紙だけで本冊子を構成。開きの良さと耐久性と美観の3つを同時に実現するために、機械によるPUR製本の糊を極限まで薄くし、のちに手作業で背布を貼り付けている。
― 出版社説明文より
- 判型
- 198 × 150 mm
- 頁数
- 200頁、掲載作品188点
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2020
- エディション
- 500