蝶の見た夢
昨年の写真集「南国頌」に続き出版された藤原敦の新作写真集。
写真における時間性を感じさせる秀作。
〜そして見開きでつづく写真は、あたかも一匹の蝶が、ゆらゆらてふてふと羽搏きながら、道行き、海路を渡って宮古島へ飛翔するが如き。 頁を手繰りながら、藤原敦の、夜の蝶の眼にも、彼女の亡き父の視線もが複合していくのを感じる。 宮古島では気づけばそこは聖域でもあったりする。此岸と彼岸、現世と常世(とこよ)とを行き交う蝶が好む場所だ。
「写真でなければ、自分の内に断片の様に散らばっていた表現欲は一つに結ばれなかった」と藤原敦は語る。 生まれ落ちた日本という国や家の歴史とその記憶、関係や繋がり、物事(もの)の姿形、路地や場所の感覚、夢と無意識、亡き人の人生への想い、失われた時、形見…。 こうした過去と現在(いま)が1枚の印画紙、写真集となって光と影として留る。
これもまた藤原敦の写真のもう一つの”地点”である。 それを「魂の夢路」といってもいいかも知れない。 『蝶の見た夢』もまたその夢路のうちにある。「蝶」とは古から「魂の象徴」なのだから。
加藤正樹(代官山蔦屋書店コンシェルジュ/Art Bird Books)
写真集跋文より
- 判型
- 210 × 170 mm
- 頁数
- 78頁、収録作品57点
- 製本
- ハードカバー
- 発行年
- 2014