渚橋からグッドモーニング
写真家が撮り続けた日常は、いつしか我々の人生と交わっていく。
元田敬三は路上で出会った人々に声をかけ、まるで恋するように写真を撮る写真家である。スナップとポートレート。多くはモノクロームの男気溢れる世界。そんなまっすぐな写真行為を続け写真家としての確かな評価を集めてきた。結婚し、青年期を過ぎた。人生の伴侶との確かな道のりとともに子供たちは海辺で大きく成長していた。気づけば日常にカメラを向けるようになっていた。日記のように綴られる日付入り写真の集積。しかし当たり前に過ぎていく日々には、本当に大切なことが刻まれていた……。
舞台は逗子の海辺、東京、各地のストリート。人々との邂逅、子供たちの輝き、そして母の旅立ち……。ページをめくるにつれ写真家の日記は、いつしか我々の人生と交わっていきます。365点にのぼるカラーポジによる写真と日々を綴った文で構成された、見ごたえ読みごたえのある写真集になりました。帯文は森山大道が執筆!
森山氏からは、本作へこんな言葉もいただいています。
「日記と日録は、しぶとく、したたかな日々の記録=写真に他ならない。」
― 出版社説明文より
早朝のアルバイトをはじめた。毎朝通勤で通る渚橋からの風景はいつも予想とは違う驚きに満ちたものだった。来る日も来る日も写真を撮った。次第に毎日の繰り返しは決して同じ繰り返しではないことに気付き身の周りのことに強い関心を持つようになった。些細な出来事や大切な瞬間を敏感に受動出来るようになったことで荒れていた心は次第に平静を取り戻した。大切なことが溢れている。渚橋からグッドモーニングと呪文を唱えると水面で魚が跳ねて鳥の群が頭上を旋回する。タンクトップの老人は体操を始め、三脚に望遠レンズのキャメラマンは朝焼けの富士を狙う。白い船が沖へ向かう。嗚呼、渚橋からグッドモーニング。
― 元田敬三
- 判型
- 136 × 206 mm
- 頁数
- 384頁
- 製本
- ソフトカバー
- 発行年
- 2021
- 言語
- 英語、日本語
- ISBN
- 978-4-908955-11-2